「金の奴隷になった」「監視と盗聴がつきまとう恐怖と不安の中で、生きていくことがつらかった」――。南朝鮮の諜報機関に誘引されて、南側で6年間暮らし今年5月に再び北側へと戻ったパク・チョンスクさん(66)は、記者会見(6月28日)の席上、このように証言した。北側住民を南側に誘引する手口、いわゆる「脱北者」の南での生活惨状について、現地の報道をもとに探った。
南朝鮮の自殺率は10万人当り31.2人(2009年死亡原因統計)で、経済協力開発機構(OECD)加盟国でもっとも高いが、南のインターネットメディアである統一ニュースによると、「脱北者」の自殺率は、全死亡原因の16.3%で、この数字は南社会全体の自殺率の3倍だとされる。
それは南社会での生活苦が大きな要因となっているようだ。
「脱北者」の失業率は14%近くに上り、一般の4倍を超える。2010年、「脱北者」定着支援施設である「ハナセンター」30ヵ所と関連団体を通じて、「脱北者」222人を対象にした実態調査結果を与党議員が発表。66%が「生活状況が苦しい」と感じており、月に100万ウォン(約7万円)も稼げない人たちが77%に達し、56%が政府指定の最低生計費である50万ウォンすらも稼げていない状況だ。
同年に「脱北者」支援財団が明らかにした資料によると、経済活動人口10人に1人が失業状態にあり、就業経験がある「脱北者」の63.4%が、職場での冷遇をはじめもろもろの理由から一つの職場で1年以上働けていないという。
また、「脱北者」たちの証言として浮かび上がるのが、社会の「目」の厳しさだ。
統一ニュースが、ある「脱北者」の話として伝えたところによると、南社会では同等な人格として認められず、政治的に利用される「消耗品」として扱われていると感じることが多いという。「天安」号沈没事件(2010年)、延坪島砲撃戦(2011年)、また「従北」論争など、北南関係の悪化が彼らへの深刻な社会的冷遇をさらに生んでいる。
南側の低所得者層からは、「脱北者」に恩恵が与えられ、むしろ自分たちが逆差別を受けていると考える人たちも多く、そうしたことから「脱北者」は、当局から与えられる補助金で暮らす「最下層民」として暮らさざるを得ない状況だとされている。
一方で、中・高等教育現場での影響も多く、公開された資料によると、「脱北者」大学生の中途脱落率は一般大学生の6倍を超え、休学率は66.7%に達している。
「脱北者」は南朝鮮に着くと、まず審問を受けることになる。国家情報院、統一部、警察などが関わる総合合同審問所で、彼らは事実上「監禁状態」に置かれ、北側に残る親族や交友関係、学力や履歴など、すべての「過去」の告白を強要される。
証言などから、その過程で暴言や暴行が横行していることが明らかにされている。女性の場合、男性調査官から性体験の有無まで調査されたとされる証言も多く、著しく人権が侵害されている深刻な状況だ。
南当局では、「脱北者」に定着支援金として一人当り600万ウォン支給しているが、合同審問での返答態度が問題視されると半額にされるなど、支援金を盾に調査員たちが脅しをかけるケースもある。
当局は暴言や暴行への対策を立てるどころか、2010年9月27日、「脱北者」の合同審問の根拠条項である「保護および定着支援に関する法律」施行令を改定し、既存の90日だった調査期間を最長180日に延長している。
特に問題なのは、高額報酬を目当てに朝中国境地帯にうごめく多数のブローカーの存在だ。南の保守団体やキリスト教団体などが関わり、南当局までが背後にあるとされており、「脱北ビジネス」が横行している。
報道などによると、成功報酬は300万ウォン程度とされ、「脱北者」らは南当局から支払われる定着支援金のほとんどをブローカーに手渡さなければならなくなる。
一方で、女性たちは経済的貧窮などの理由から性売買に陥りやすい状況だ。平壌で記者会見に臨んだパクさんも、南社会に幻滅し北側への帰郷を決めた知人女性が渡航費を稼ぐために性産業で働いたが、結局賃金が支給されず、女性は絶望感から自殺したと証言している。
(朝鮮新報)