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過剰反応は、問題の解決にはならぬ – 前田哲男

2012年04月17日 16:38 主要ニュース 共和国

朝鮮の人工衛星打ち上げで

朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が人工衛星の打ち上げをめぐって、日本国内では政府、メディアが相変わらず過剰、過敏な大騒ぎを続けている。

朝鮮問題の本質は朝米関係においては、停戦協定を平和協定に代えることであり、日朝関係においては、日本の過去清算に基づいた朝・日国交正常化の実現である。敵対関係を友好関係に転換させることで一連の懸案問題を解決するということが本質である。

朝米、日朝問題共に、本質を把握したうえで、これを論じることが求められているが、米日両国政府ともに、本質的な問題ではない末梢的なことで過剰な反応をしているが、これは問題の解決にはならない。しかし、米朝間では、対話の扉は開かれており、平和協定締結問題について、米国は分かっている。

しかし、日本政府は02年、平壌宣言で合意したのにも関わらず、国交正常化交渉の動きを退化させるばかりで、誤った情勢認識に陥っている。朝鮮民主主義人民共和国との関係は、「韓国併合」以来の侵略と植民地支配の歴史の清算を行い、その原点に戻ったうえで拉致問題も解決すべきである。にもかかわらず、朝鮮の一挙一動に過剰な反応をするばかりでは何の解決にもならない。

さらに危険なのは、世論とメディアの密接な関係である。02年9・17以降の「北朝鮮憎悪とナショナルな義憤」をかき立てる日本のメディアのエモーショナルな報道。その一体化の流れの中で、10年以上続く景気の悪化や閉塞感による世相の暗さがある。民主党政権も新しい政治どころか、自民党時代の歪んだ構造を打ち破ることができず、対米追随策にしがみつくばかりである。そうしたなかで人々の鬱屈や不満が、反朝鮮、反中国感情へと結びついているようだ。国民の戦後史認識の欠如とゆがみによって、戦争のできる国家体制作りが容認され、民族排外主義的な妄言や暴力が横行する極めて危険な事態である。米国には文句が言えないから、不満の捌け口がアジアに向けられる。情けないのは、メディアがそれに乗っかっていることだ。メディアと世論の相乗効果で、今回の反朝鮮風潮が一挙に広がっている。朝鮮の人工衛星打ち上げが、日本の国内政治に利用されているわけだ。

ことの本質は、日朝関係がいまだ「戦後」になっていないということである。

いわば、日朝関係は形のうえでは戦前のままである。日朝正常化が実現していないということは、国際法上、朝鮮との関係は、過去の植民地支配が未清算のままということだ。国際社会では、英、仏はそれなりに過去の清算を果たし、そこに向き合ってきた。それをやっていないのは、日本だけである。道義からいっても、日本は恥ずかしい。平壌宣言に基づき、過去の清算を行い、国交正常化交渉のテーブルについていれば、核もミサイルも拉致についても、交渉して対話することができたはずなのに、相手が対話に応じてくれないのは、日本が騒動ばかりして、本質から背を向けているからである。

繰り返し言えば、問題の本質は、日朝間の根本問題を解決するために、日本政府は、日朝平壌宣言を遵守すべきであり、国交正常化交渉のテーブルに着くべきである。朝鮮半島を植民地支配した責任から逃れることはできず、そこに真摯に向き合い、自覚すべきである。そこからスタートする以外に解決の道はない。(軍事評論家、まとめ=朴日粉)

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