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〈続・朝鮮史を駆け抜けた女性たち 19〉「三大悪女」のひとり/金介屎

2010年08月06日 00:00 文化・歴史

卓越した頭脳で王を魅了

朝鮮王朝時代の尚宮たち(昌徳宮)

朝鮮王朝時代の尚宮たち(昌徳宮)

奴婢から尚宮に

於乙于同、張綠水、そして金介屎。朝鮮王朝時代、王に寵愛され、歴史にその名を留めた「三大悪女」である。「悪女」、陳腐な表現である。金介屎は、美貌や歌舞、性的な術策のみで王を誘惑したわけではなく、飛び抜けた判断力とその頭脳で王を魅了したと伝わる。朝鮮王朝実録には彼女の容貌が年頃になっても「花開くことはなかった」とある。

金介屎は、朝鮮王朝第15代王(1608~1623)光海君の王位継承に脅威となるその異母弟永昌大君と継母仁穆大妃の排除に努め、派閥の政敵を陥れるなど政治的手腕に長けた宮女であった。光海君の信頼を得て政治の舞台で活躍した金介屎は、幼くして入内し尚宮にはなったが、後宮にはなれなかった。

「燃藜室記述」21巻「廃主光海君故事本末 光海乱政」には「金尚宮は賎しい奴隷の娘であった(金尚宮賎隷之女也)」とある。介屎という一風変わった名前は、彼女の「ケトン(鯵極)」という呼び名の音と意味を無理に漢字にあてたものである。「ケトン」、犬の糞という意味である。大切な男子の跡継ぎの厄除けのために、わざと賎しい呼び名をつけるのはよくあることである。だが、奴婢の娘であった彼女の場合、厄除けのための呼び名であった可能性はかぎりなく低い。

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