仏教の開祖であるブッダ(本名=ゴーダマ・シッダールダ)は生涯、うそをつき続けました。
およそ2500年前、釈迦族の王子として生まれたブッダは、29歳のとき、生きることに矛盾を感じ、すべてを捨てて山で厳しい苦行を行いました。しかし、苦行のみでは悟りを得られないとしたブッダは山を降り、スジャータから乳糜(牛乳粥)をもらい心身ともに回復させ、心落ち着かせて菩提樹の下でついに叡智を極め、悟りを得ました。
35歳になったブッダには悟りの後光が差していました。しかし、80歳で涅槃されるまで一言も悟りについて話しませんでした。それは「言葉も真実ではない」からです。言葉も人が作ったもの、真実は言葉では伝えられない.と悟ったからでした。
そして、ブッダは「うそ」をつきました-「悪いことばかりしていると地獄に落ちますよ」-でも実際は、悪いことばかりしたからといって必ずしも地獄に落ちるとは限りません。つまりブッダは、現世で善いことをしましょうと言いたいがために、それを逆説的に表現したわけです。
ブッダのうそとは、真実を知る者のみがつけるうそ、つまり方便でした。ブッダはその人その人に合う言葉で方便を語ってあげたのです。(おわり)
(お話:尹碧巌・国平寺住職、イラスト:河美香・埼玉初中教員)