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〈朝鮮と日本の詩人 60〉上林猷夫

強くこみ上げてくるもの

私は百貨店の廂の下でバスを待っていた。

省線に跨る陸橋の仮橋。

蒸気ハンマアの地響きが絶えず甲高く落ちてくる。

板囲いに沿ってひっきりなしに人が続いて出たり行ったりごった返している狭いターミナル地帯。

ふと私は背後に変ななまりの日本語を聞いたので振り返ると

五つ位の女児の手を引いた半島の女が

小さな紙片を示し傍のものに行先を訊いているのであった。

どうも要領を得ぬ様子でぼんやり相手の顔のあたりを眺めていたが

急に子供の手をひっぱり駆け出して行った。

向うの人込みの中から黄服の半島の女が出てくるところだった。

二人は立止まり長く話し合っている肩にやすらいがあった。

瞬間私は何か強くこみ上げてくるものを感じた。

私の後できっと一群の人々もこれを見たであろう。

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