〈サッカー・空手〉サッカー、空手に出場した同胞選手たち

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プライドを胸に、アジアの舞台で堂々と

【仁川発=李永徳】9月19日から10月4日にかけて仁川で行われたアジア競技大会にはサッカーと空手の競技に6人の同胞選手が出場した。祖国や同胞社会の期待に応えようと在日朝鮮人としてのプライドを胸に刻み、アジアの舞台で堂々と戦った同胞選手たちは今後も国際大会で祖国の威容を轟かせていく決意に満ち溢れている。

男子サッカー/李栄直選手(J1・徳島ヴォルティス)

(写真:盧琴順)
男子サッカー/李栄直選手(写真中央、撮影:盧琴順)

今大会で初めて朝鮮代表のユニフォームに袖を通した李選手は全6試合にフル出場を果たし、同大会では24年ぶりとなる銀メダル獲得に大きく貢献。出場時間はチーム最多で準々決勝ではアシストも記録するなど、チームの中心選手といっても過言ではない活躍を見せてきた。

豊富な運動量や球際の強さはチームにマッチし、長短織り交ぜたパスやダイナミックな攻撃参加でアクセントを加えた。ピッチ上で自身の真価を証明していくほどに「チームからの信頼度の高まりが手に取るようにわかった」という。

「朝鮮代表としてプレーして国を背負う重さを実感した」と同時に、「自分の長所が世界の舞台でも通用したことで自信を得られた」と話す。

サッカー選手としての飽くなき向上心はこれからも変らない。

「朝鮮代表のトップチームでプレーしたいという意欲はずっと持ち続けていくつもりだ。そのためには個人の力で試合の流れを変えられるプレーヤーにならなくてはいけない。まずは日本の所属クラブでレギュラーポジションを確保したい。絶対にこの大会の活躍だけにとどまりたくない」

男子チームのユン・ジョンス監督も「安英学選手のように献身的で闘志溢れる選手になってくれることを願っている」と今後の成長に期待を寄せている。

男子空手組み手55㎏以下級/宋尹学選手(朝大・外国語学部1年)

男子空手組み手55㎏以下級、宋尹学選手(写真:李永徳)
男子空手組み手55㎏以下級、宋尹学選手(写真:李永徳)

昨年6月に中国で行われた「第3回東アジア空手道選手権大会」に朝鮮委任代表として出場。当時大阪朝高3年ながら代表デビューとなった大会で堂々とした試合運びを見せて銅メダルに輝いた。もちろん今回のアジア大会でも「メダル獲得を狙っていた」。

今年4月には祖国で朝鮮空手道連盟の選手らとの強化訓練に参加。多様な蹴り技を駆使する祖国の選手から多くを学んだ。仁川入りしてからは普段どおり試合のイメージトレーニングをして自分のペースで準備を進めていったが、本番ではネパールの選手を相手に思い通りにプレーができなかった。素早い突きからポイントを奪ったものの敗戦を喫し、「自分の蹴りもうまく出なかった」と省みる。

「高3の時よりは成長していたかもしれないが、自分の実力がアジアの舞台に追いついていなかったのは確かだった」。全般的な技術の底上げの必要性を感じ、喫緊の課題としてステップや間合いの取り方をあげる。

これからも国際大会でのメダル獲得という目標はぶれない。選手としてもう一段ステップアップするためには「今大会で感じたことを忘れずに、常に試合を想定しながら練習に取り組んでいくしかない」と語った。

男子組み手60㎏以下級/梁基哲選手(朝大・文学歴史学部3年)

男子組み手60㎏以下級、梁基哲選手(写真:李永徳)
男子組み手60㎏以下級、梁基哲選手(写真:李永徳)

代表選出が決まった時は驚きが先行し、大会に向けて練習を重ねるうちに徐々に国を背負って戦う責任感に包まれていった。

人生初の国際大会。代表選手としてのプライドを胸に刻み、一つでも多くの勝利を収めることを目標に掲げていた。「試合前には緊張のあまり足が震えたが、会場の声援や宋修日監督の激が耳に入ってからは自然と試合に集中できた」と話す。

試合では2010年アジア大会の同級覇者と対戦。果敢に攻め込んだが経験と技術で上回る相手に波乱を起すことはできなかった。「自分の未熟さを痛感した」。

アジア中から集まった優秀な選手たちの試合を観戦しながら気づいたことは「なによりも基本動作が大切だということ」。

再び国際舞台に立つためには「毎日の練習でどれだけ自分を追い込み、目の前の試合に全力で挑めるか」にかかっている。日々の積み重ねが成長への一番の近道だということは十分実感している。

「空手は在日同胞にも国際舞台への道が開けている。今後もっと自分が活躍することによって後輩たちに希望を与えたい」と決意を新たにしている

男子組み手67㎏以下級/康成志選手(会社員)

남자가라떼 개인대련 67kg급경기에 참가한 강성지선수(사진 오른쪽, 제공 재일본조선인가라떼도협회)
男子組み手67㎏以下級、康成志選手(右、写真提供:在日本朝鮮人空手道協会)

ここ数年で空手競技はルールが変り、それとともに試合の進め方にも常に変化が求められてきた。今大会に向けた日々は「世界の流れに対応しようと練習に励んだ毎日だった」という。

国際大会は5度目。これまでどおり「朝鮮代表」として出場する責任の重さを感じながら、勝利を収め祖国や同胞社会に喜びを与えるためにインドネシアの選手との初戦に全力で臨んだ。試合では攻撃の手を緩めずに流れを掴みかけたが思うようにポイントが入らなかった。

「自分の勝敗が祖国の国際大会への出場枠にも関係してくる。そういう意味でも試合に負けて情けない、悔しいという気持ちでいっぱいだった」。そして「世界の壁が高いとは思わないが、届きそうで届かないもどかしさがある」と募る思いを吐き出した。

格上の相手を打ち負かし世界の舞台で勝ち上がるには、土台となる「下半身を徹底的に鍛え接近戦も磨いていかないといけない。自分の課題を克服するために前だけを見つめて進んでいきたい。この悔しさをバネにしてこれまでの2倍、3倍練習に励み、来年のアジア空手道選手権大会(横浜)で優勝したい」と話す。

女子組み手50㎏以下級/個人型、姜知衣選手(朝大職員)

녀자개인대련 50kg급경기에 참가한 강지의선수(사진 리영덕기자)
女子空手組み手50㎏以下級、個人型、姜知衣選手(写真:李永徳)

今年で空手を始めて10年目。2006年のドーハ・アジア大会で8強に輝いて以来、常に世界の舞台を見据えてきた。膝の靭帯を負傷し2度の手術を経験しても、日頃から痛み止めの注射を打つなど処置を施し練習や試合に励んできた。満身創痍の状態で今大会で組み手をやめようと心に決めていた。だからこそ「今大会を選手生活の集大成にしようと意気込んでいた」。

9度目の国際大会となった今大会初戦の対戦相手は、世界1位の強者だった。一歩も引かずに最後まで戦ったが相手のほうが上手だった。試合後は溢れ出る涙を抑えきれなかった。

「空手を続け国家代表にも選ばれことができたのは、祖国や様々な人々の支えがあったから。自分だけの力ではこの舞台に立てなかった」

今後は朝大空手道部のコーチとして選手育成活動に力を注いでいきたいとしながら、もうひとつ大きな目標を掲げている。

「朝鮮の空手が世界から認められるためには、組手だけでなく形も必要」との思いで昨年から世界空手道連盟の指定型の練習を重ねて今大会では朝鮮代表選手として史上初めて型種目に出場した。4位の成績を収めたが「まだまだ力不足。型に専念して来年に横浜で行われるアジア空手道選手権大会で必ず一番高い表彰台に立ちたい」と抱負を語った。

女子組み手55㎏以下級/金明花選手(神戸朝高教員)

女子組み手55㎏以下級、金明花選手(写真:李永徳)
女子組み手55㎏以下級、金明花選手(写真:李永徳)

「一度は朝鮮代表をあきらめかけたこともあった」

朝大時代に2度の国際大会を経験したが、今年から教員として神戸朝高に赴任してからは教員と選手の両立が難しく、空手の練習時間も十分に確保できなかった。

それでも「代表を目指してほしい」という同僚や生徒たちの応援をもらい考えを改めた。代表選出が決まるとたくさんの同胞たちから激励をもらい、物心両面での数々のサポートに心を打たれた。だからこそ「限られた時間に要求性を高めて練習に励み、祖国や同胞社会の期待に応えたいという一心で試合に臨んだ」と話す。

世界の舞台を経験していくうちに勝利への執念は増していき、今大会では「なにがなんでもメダルを取りたかった」。しかし初戦でベトナムの選手に敗れ「選手としての限界を感じた」と明かした。

当面は指導者として選手育成活動に尽力していく決意を固めている。

「大会に出場できて本当に学ぶことが多かった。今回の経験を活かして今後もっと空手に対する知識を深めたい。技術はもちろんのこと精神的な面でも多くを教えられるような指導者になって、次世代を担う代表選手を輩出できるように頑張っていきたい」

(朝鮮新報)